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京都地方裁判所 昭和60年(わ)909号 判決

本籍

京都府宇治市志津川南組三〇番地の一

住居

京都市左京区岩倉幡枝町四一八番地の七

会員役員

掛川きみ子

大正一四年一月八日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察宮山根英嗣、小池公雄出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役六月及び罰金七〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金一万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は所得税を免れようと企て、全日本同和会京都府・市連合会会長鈴木元動丸、同会事務局長長谷部純夫、同会事務局次長渡守秀治及び松本善雄らと共謀の上、

第一  自己の所有する京都府宇治市志津川南詰八番二外三筆の宅地などを昭和五七年一二月二七日九三六〇万円で売却譲渡したことに関して、自己の実際の昭和五七年分分離課税の長期譲渡所得金額は八七〇八万三六五六円、総合課税の総所得(給与所得)金額は二三二万二〇〇〇円で、これに対する所得税額は二一九五万一三〇〇円であるにもかかわらず、株式会社ワールドが有限会社同和産業(代表取締役鈴木元動丸)から九〇〇〇万円の借入れをし、その債務について自己が連帯保証人となり、右ワールドが破産したことから右連帯保証債務を履行するために右不動産を譲渡し、その譲渡収入で同月二八日七〇〇〇万円を履行したが、右ワールドに対する求償不能により同額の損害を被った旨仮装するなどした上、昭和五八年三月一五日、京都市左京区聖護院円頓美町一八所在の所轄左京税務署において、同署長に対し、自己の昭和五七年分分離課税の長期譲渡所得金額は一三〇一万〇〇七二円、総合課税の総所得金額は二三二万二〇〇〇円で、これに対する所得税額は二六二万四九〇〇円である(但し、長期譲渡所得にかかる所得税金額の計算誤り及び住宅所得控除の適用誤りにより、二五八万三九〇〇円と記載)旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右の正規の所得税額二一九五万一三〇〇円との差額一九三二万六四〇〇円を免れ

第二  亡夫掛川庄五郎と先妻との間に生まれた長男掛川榮一がその所有する京都府宇治市志津川南詰五番外三筆の宅地を昭和五七年一二月一七日九五〇〇万円で売却譲渡したことに関して、被告人において右掛川榮一の代理人として同人の所得税確定申告をするにあたり、同人の実際の昭和五七年分分離課税の長期譲渡所得金額は八八一〇万〇二八七円、総合課税の総所得(給与所得)金額は二八四万六〇〇〇円で、これに対する所得税額は二二二五万〇二〇〇円であるにもかかわらず、前記株式会社ワールドが前記有限会社同和産業から九〇〇〇万円の借入れをし、その債務について右掛川榮一が連帯保証人となり、右ワールドが破産したことから右連帯保証債務を履行するために右不動産を譲渡し、その譲渡収入で同月二八日七〇〇〇万円を履行したが、右ワールドに対する求償不能により同額の損害を被った旨仮装するなどした上、昭和五八年三月一五日、横浜市保土ケ谷区帷子町二-六所在の所轄保土ケ谷税務署において、同署長に対し、右掛川榮一の昭和五七年分分離課税の長期譲渡所得金額は一四二六万六六三三円、総合課税の総所得金額は二八四万六〇〇〇円で、これに対する所得税額は二八五万三二〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右の正規の所得税額二二二五万〇二〇〇円との差額一九三九万七〇〇〇円を免れさせたものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する各供述調書(検第二七ないし三四号)

一  証人篠田浩及び同辻村七郎(第五回公判期日におけるもの)の当公判廷における各供述

一  鉢呂靖彦(検第八ないし一〇号)、辻村七郎(検第一一ないし一四号、但し、一二号については一ないし二四項、二六ないし二八項、三〇ないし三三項、一三号については一ないし一一項、一四号については一ないし一二項、一四項、一五項、一七ないし二七項、三三項の各部分)、掛川榮一(検第一七号)の検察官に対する各供述調書

一  篠田浩(検第五、六号、但し、五号については一項、二項、四ないし八項、六号については一ないし四項の各部分)、鉢呂靖彦(検第七号、但し、一ないし九項、一一ないし三一項の各部分)、木村トミ子(検第一五号)、田中隆(検第一六号)、村井英雄(検第一八号)、松本善雄(検第一九ないし二三号、但し、二三号については一ないし五項、七ないし二二項の各部分)、長谷部純夫(検第三七号)、鈴木元動丸(検第三八号)の検察官に対する各供述調書謄本

一  五木田次男の大蔵事務官に対する供述調書(検第二四号)

判示第一の事実につき

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(検第一号)、証明書(検第二号)及び報告書(検第三五号、謄本)

判示第二の事実につき

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(検第三号)、証明書(検第四号)及び報告書(検第三六号、謄本)

(法令の適用)

罰条

いずれも刑法六〇条、所得税法二三八条(いずれも懲役と罰金を併科、なお判示第二については同法二四四条一項も適用)

併合罪の処理

懲役刑につき刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の重い判示第二の罪に法定の加重)、罰金刑につき同法四五条前段、四八条二項

宣告刑

懲役六月及び罰金七〇〇万円

労役場留置

同法一八条

懲役刑の執行猶予

同法二五条一項

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 氷室眞)

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